統計の専門用語を使わない報告書づくり

2月に実施した病院(一般500床以上)の患者満足度調査の概要がまとまり、ご担当の方に第一次の報告として作成したグラフなどをご提供することができました。この際に前回の報告書よりわかりやすいものができてとてもよかったですとの評価をいただきました。
この案件の初回の打ち合わせは、猛暑と言われた昨年の8月、夕暮れ時でした。お話によると、この病院では、患者満足度調査アンケートをこれまで調査会社に依頼をしていたようでした。

打ち合わせの際に、前回作成されたという報告書を見せていただきました。「この報告書と同じような報告書と病院のデジタルサイネージで上映できるデータを作成してほしいと考えています」とのご依頼を受けました。

そこで、まず報告書に必要な分析内容を前回作成の報告書から読み取ることにしました。ざっと見た印象では、「因子分析」「相関係数」など統計分析で使われる用語が並んでおり、統計の専門家ではない病院スタッフの皆さんにとってはわかりにくいものになっているのではないかとの疑問を感じました。

ちなみに相関とは2つの変数の規則的関係を表わすものです。
一方の変数が大きくなった時に他方の変数も大きくなる(小さくなれば小さくなる)ときを「正の相関がある」と言います。これと逆の関係、つまり一方の変数が大きくなった時に他方の変数が小さくなる(小さくなれば大きくなる)ときを「負の相関がある」と言います。この相関関係の強さを表すものが相関係数といいます。-1から+1までの間で変化し、-1に近いほど負の相関関係が強く、+1に近いほど正の相関関係が強いといわれています。
因子分析とは、測定された多数の変数の相関関係に基づいて、共通する因子を抽出する手法と言われ、直接図ることのできない潜在因子を多数の計測可能な変数をもとに導き出すものです。実際の計算方法などは、大変込み入った話になるのでここでご紹介するのは避けたいと思います。興味のある方は「因子分析」で調べてみてください。

また、見せていただいた報告書では「他病院の平均値との比較」がなされていましたが立地条件や開設している診療科目の違いがあり地域の中で期待されている役割の違いもある中で、全国平均値(しかもその調査会社が調査を担当した病院の平均値)との比較の有効性に疑問を感じました。

そこで、「この報告書では統計の専門用語がたくさん使われていますが、病院の中で他のスタッフの皆さんに結果を説明する時に苦労されてませんか。」という問いかけと「この全国平均との比較の部分は必要でしょうか」とお聞きしました。

予想通り、統計の専門用語を使った報告書は担当の方もわかりにくく、病院の他のスタッフへの説明もこのような報告書が来ていますとの紹介にとどまっているようでした。
「全国の他の病院との比較」については、「報告書としてわかりやすいものであれば形式や項目について、こだわりはない」とのことでした。

ちょうど、別件で対応していた大学の授業評価アンケートをご担当されている方から、「統計の専門でもなく、担当が変わったばかりの時に専門用語がいっぱい入った説明をされたり、専門用語の説明の原稿作成などを求められたりすることがあり本当に困ったんですよ。」と言われていたことを思いだしました。

そこで、統計分析の専門用語をできるだけ使わないで、だれもが見て直感でわかる報告書を作成することにしました。たとえば、「相関係数」は、クロス集計の帯グラフ化を並べることで、関連の度合いの大きさを見て取れるものを作成することにしました。
また、「因子分析」は「この病院を知人や友人に紹介してもよいと思うか」という設問と設備・サービス・接遇態度などへの満足度を問うすべての設問とのクロス集計を行い、この結果を帯グラフとして表すことにより、影響度の高い設問を直感的に判断できるものを作成することとしました。

昨年末には、この意図をお客様に理解していただけるようにするために、ダミーデータを使い報告書の見本の作成し、ご担当の方にご確認をしていただきました。この段階では、調査を行ったデータではないため、回答の傾向を読み取るということはできず、「一応こんな感じでの報告書になると思います」という説明を行いました。また、この報告書の見本を作成する作業の中で、性別・年齢といった患者様の属性の違いによる回答傾向の違いがあるのかを資料化してみたら役に立つのではないかと考えていたのでそのことをお伝えしたところ、入院の部屋タイプによる回答傾向の違いもつかみたいとのご要望をいただきました。

こうして、回答者属性として「年齢・性別・入院の部屋タイプ」ごとの回答傾向の違いと各項目への満足度の違いが「この病院を知人や友人に紹介してもよいと思うか」の回答態度にどのような影響を与えているかをクロス集計で明らかにする形での報告書用資料を作成しご説明に伺いました。
資料からは、性別・年齢による回答の違いや「この病院を知人や友人に紹介してもよいと思うか」の回答に大きな影響を与えると思われる質問項目が見て取れるものになり、担当の方からの「とてもわかりやすい資料ができました」との評価をいただくことができました。

現在は、病院の担当者がこの資料を基に病院の全スタッフに向けた報告書として掲載すべき事項を何にするかのご検討をしていただいているところです。

掲載する事項が絞りこめたところで、報告書の形として作成するとともに、病院待合室で閲覧可能なデータを作成する予定となっています。

Get Adobe Flash player