電子化にともなう許諾確認作業の受託

すでに休刊となってしまった学術系の雑誌について、電子化してネット上で公開したいというご依頼がありました。

お話しを伺った際に、学術系なのでEPUBなどの電子書籍化のご要望もあるかと思っていましたが、学術系の論文の場合は引用される場合に、なんという本の何ページに引用元があるのかを記載することが多く、ページという概念を持たないEPUBでは不都合があるというご指摘を頂き、なるほどと思いました。

結局、PDFにして公開するということになりデータのあるものはデータから、データがないものは印刷物をスキャンニングして、OCR処理をして透明テキストを付与させるという形式でPDF化することにしました。

通常であれば、印刷会社である当社はPDF化を実施すればいいということになるのですが、お客様から「雑誌に掲載する許諾は著者からもらっているが、電子化して公開する許諾はもらっていないので、その許諾が必要」という話しになりました。

最初は「それはなかなか大変な作業だなぁ」と人ごとだと思って聞いていたのですが、「その許諾確認をするところからお願いできないか」と言われてビックリ!まさか、そこから委託されるとは予想していませんでした。

しかしお客様がお困りの事を解決するのがモットーの弊社ですので、初めてのことではありますがチャレンジすることにしました。対象となる著者は200人ほどでした。著者名は抜き出したデータがあったので、それを元にしながら、実際の雑誌掲載時の肩書きや所属を便りにネットで検索し、現在の所属や住所を割り出しました。

この結果をお客様に提出したところ、「せっかく調べてもらったのに悪いが、雑誌に掲載されている時点での所属先に送ってもらえれば、そこから新しい転出先に転送してくれるはずなので、そちらに送ってもらえないか」という話しになりました。そこで再度、掲載時の所属の住所を調べ直しました。許諾依頼書と確認書をお客様に作っていただき、差し込み印刷でお名前や掲載論文を刷り込み、返信用封筒などを入れて発送しました。許諾書に公開の可否を記入していただき、返信用封筒で当社宛に返送していただくという手法をとりました。

最初は宛先不明で結構な数が返ってきました。当初、転送してもらえると思っていたのですが多くの所は転送せずに、そのまま返ってきてしまい、問い合わせがあったところも「今の所属はわかるが、個人情報なのでその住所などは教えられない」と言われたり、「転送してもいいがその費用は負担できない」とも言われました。一方で「転出先の住所教えますのでそっちに送ってください」と、住所を簡単に教えてくださるところもありました。費用負担できないというところには、80円切手を送って転送を依頼したりもしました。

最初に宛先不明になって返ってきたところについては、最初に行ったネットでの調査で判明した住所があれば、そちらに再送するということもしました。指定した期日より遅れて返送してきた方も結構いましたが、最終的には4割強の方の許諾を得ることができました。

今回はこの許諾確認業務の委託については、十分な費用をあてていただいたので、当社としてもしっかり取り組むことができました。さすがに無償サービスというわけにはいきません。なにせPDF化するコストより、許諾確認業務にかかるコストの方が8.5倍かかりましたので…
今後、このように電子化しネット上で公開するときの許諾確認業務というのも、結構あるかもしれないなと思いました。そういう意味では、よい経験になったと思います。

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