電子書籍の種類あれこれ(その2)

前回は、ビューワーアプリが別に必要になるファイル形式なのか、単体で表示が可能になるアプリ形式なのかによって電子書籍を分類しました。今回はそうしたデータ上の形式による分類ではなく、画面にどのように表示されるのかという表示上の分類で区別をしてみます。
これはファイル形式なのかアプリ形式なのかによらず、それぞれの電子書籍によって異なります。

(第2回)表示のタイプ:リフロータイプか?ページ(画像)タイプか?

【リフロータイプ】

読者が自分で文字サイズを変更でき、その選んだ文字サイズに合わせて一画面に入る文字数を自動的に調整してくれるタイプのものです。場合によっては行間や表示フォントを変更できるものもあります。文字サイズを大きくしても、一画面にキッチリと入る文字の量を調整してくれるため、スマートフォンなどの小さな画面で読むときも読みやすいという利点があります。

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一方、文字サイズによって画面に入る文字の量は変わるので、いわゆるページという概念が存在しません。実際に画面で読むときは、300ページ中52ページ目という表示が出たりしますが、文字サイズを変えれば分母の数字は変わってしまうので、その文字サイズで読んでいるときに全体は何ページ(画面)になって、今はそのうちの何ページ(画面)目なのかを、便宜的に表示しているに過ぎません。
読者が文字サイズを変えることができ、その都度画面構成を変えることになるので、画面のレイアウトを固定的に見せることは難しく、ビジュアル要素の強い雑誌などの書籍には向きません。
文芸書やビジネス書などの、文字中心の書籍に向いています。
代表的なフォーマットとしては、AppleのiPadやiPhoneに搭載されているiBooksなどが対応しているEPUBというものがこれに相当します。EPUBは海外では標準的な電子書籍フォーマットになりつつあり、仕様は公開され規格化されています。このためSonyのSonyReaderなど対応している端末が多いのが特徴です。日本語の書籍には必須といわれる縦書きやルビなどには対応していませんが、2011年の5月にEPUBの新しい仕様が策定され、そこで縦書きやルビなどにも対応するとともに、多段組みなど今よりは複雑なレイアウトにも対応できるようになると言われています。AmazonのKindleストアで採用されているAZWというのも同じくリフロータイプです。
この他、国内の電子書店で採用されているXMDFとか、.bookというフォーマットも、このリフロータイプに当たります。
EPUBやAZW、XMDF、.bookというのはデータの形式で言えばファイル形式に当たります。アプリ形式ではモリサワのMCBookという電子書籍アプリを開発するツールで作成されたアプリで、リフロー型の電子書籍アプリを作成することができます。

【ページ(画像)タイプ】

こちらは1ページに入る文字の量や大きさ、画像の位置や大きさなどを固定して表示させるタイプのものです。画面上で拡大・縮小ができるものと、できないものがありますが、できる場合でも拡大表示する場合は、拡大させたい部分を虫眼鏡で拡大して見るように、その部分だけが拡大されて表示され、画面の外に表示できない部分ができてしまいます。なので文字を読む場合、画面を何度もスクロールしないといけない場合もあります。

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デザインやレイアウトを固定することができるので、雑誌やカタログなどの電子化に向いていると言えます。雑誌やカタログの場合は、1ページ(画面)には、いくつもの記事や商品が並んでおり、見たいところだけを拡大させて見るという見方でも実用に耐えることから、こうしたタイプで表示されることが少なくありません。
代表的なフォーマットはPDFでしょう。PDFは電子書籍端末やスマートフォンの、ほぼすべてに対応をしており、作成ツールもフリーのものを含めてたくさんありますので、手軽に電子書籍として開始することができます。
ただしパソコンでは問題なく表示できるPDFの段階でも、電子書籍端末やスマートフォンでPDFを表示させた場合、複雑なデータになっていると処理能力の限界を超えてしまい表示できないという場合もあります。
パソコンに比べて非力な電子書籍端末やスマートフォンに合わせてページを画像化したPDFにしたり、PDFをベースにして電子書籍アプリに変換して公開するということも少なくありません。
PDFをベースにして電子書籍アプリ化するツールは各社からたくさん出されています。PDFを渡すだけで書籍アプリ化してくれるサービスもあり、1冊数万から数十万の費用がかかるようです。サービスによっては動画の埋め込みなどにも対応しています。

次回の電子書籍シリーズでは、電子書籍で自費出版を行うことを想定した場合、どんな配布方法、販売経路があるのかについてまとめてみたいと思います。

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